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2024.06.11

皮膚科専門医によるニキビ・皮膚科ブログ

アトピー性皮膚炎治療薬 ~生物学的製剤の使い分け~

5月にアトピー性皮膚炎の新たな治療薬、イブグリースが発売されました。アトピー性皮膚炎治療薬、4製品目の生物学的製剤です。

 

 

 

 

 

 

ここ数年アトピー性皮膚炎の治療の進歩は目を見張るものがあり、先日京都で開催された皮膚科学会総会でもその話題の講演が多く開催されていました。

 

 

アトピー性皮膚炎は遺伝や環境・免疫学的因子を要因とする複雑な疾患です。

現段階で発症に関連するサイトカイン(体の中の信号のようなもの)はいくつか分かっています。代表的なものがIL-4、IL-13、IL-31です。(他にも数多くのサイトカインがあります)

 

 

アトピー性皮膚炎は外用治療がかなめですが、既存治療で効果不十分な場合、JAK阻害薬や生物学的製剤による治療が検討されます。

 

 

ざっくりいうと、今起きている皮膚の炎症を抑えるのが外用治療、かゆみや炎症が起きる前にその信号を止めて抑えてしまう薬が生物学的製剤、JAK阻害薬となります。

 

どの薬も、炎症性サイトカインに作用して効果を発揮します。

 

 

JAK阻害薬には、オルミエント、リンヴォック、サイバインコがありますが、感染症等の重篤な副作用のリスクがあり、投与前の血液検査、胸部レントゲン検査が必要になることから、当院では扱っていません。

 

 

生物学的製剤は決まった間隔で皮下注射をすることでターゲットなる炎症性サイトカインを抑えます。

 

 

当院ではデュピクセント、ミチーガ、そして新薬のイブグリースを扱っております。

 

それぞれの特徴を表にまとめました。(アドトラーザは当院では扱っておりません)

 

 

 

 

(2024年6月)

 

 

 

この中でもデュピクセントは2018年発売から6年の実績があり、一番症例数が多いです。自己注射をすることで高額療養費制度を利用でき、月々の負担を減らすことができます。

 

 

ミチーガはかゆみにターゲットを絞った製剤で、皮疹は重症ではないけれど、とにかくかゆみが強い方にお勧めしています。注射が4週間に1回で済むというのもメリットです。副作用として浮腫性紅斑が出現することがあるので、皮疹の悪化に注意が必要です。

 

イブグリースはIL-13を選択的に抑えます。半減期(体内に薬剤が留まる期間)がデュピクセントよりも長いので、症状が落ち着いている方は4週に1回まで投与間隔を伸ばせます。

 

新薬のため自己注射でのまとまっての処方ができず、投与の際は来院していただく必要があります。

 

 

…難しくて分からない、という方も多いかと思います。患者さんの皮疹の重症度やライフスタイル、収入によって選択肢も変わってきます。

 

最後に、誰でも適用となる治療ではありません。基本的にステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等の外用治療を一定期間施行しても改善が乏しい、重症の方に適応になります。デュピクセントに関しては6か月以上が目安となります。

 

当院治療中の方はこちらで経過を見て適応となる方と相談の上導入しますので問題ないのですが、初診の方の場合は前医の紹介状、もしくはお薬手帳などで一定期間の治療歴を確認できる方で、診察して生物学的製剤が適用になると診察時担当医師が判断することが導入の条件となります。外用治療をしばらくしていない方の場合は、まずは外用治療からになります。

 

これらの治療によってアトピー性皮膚炎治療が劇的に進歩しているのは間違いありません。特にデュピクセントは生後6ヶ月から使用できるため、人格形成期となる大事な幼少期での治療を行うことはその子の成長に影響を与える可能性があります。

 

当院では医師やスタッフによる外用指導を始め、アトピー性皮膚炎治療に力を入れています。お困りの方はご来院ください。